【関西】近畿の自治体、認知症対策を強化 高齢者増に備え

日経新聞 2014/8/15

 

 近畿の自治体などが認知症対策を強化している。予防に向け脳などを刺激する「脳活」に取り組むほか、早く気づいて対応できるよう自己診断のシートを配布する。徘徊(はいかい)した際に早期に発見できるよう、コンビニやタクシー事業者らに捜索・通報などで協力を得る仕組みを整える。高齢患者の増加が見込まれることから、対策を急ぐ。

 京都府亀岡市は65歳以上の高齢者が運動やゲームなどを楽しむ「脳活カフェ」を6月から本格実施している。市の生涯学習施設などを使い、指の運動や新聞紙を使った体操、高齢者同士が歓談するなどして、脳や体に刺激を与えることを狙う。「市内には認知症専門医が少ない」(市高齢福祉課)ことから、予防が重要と実施を決めた。

 和歌山県田辺市は公民館などで高齢者を対象に飲酒やたばこを禁止した「健康マージャン」を開く。楽しみながら頭を使い、予防につなげることを目指す。

 認知症は早く気づいて治療することで、症状の軽減や進行を遅らせることができるとされる。京都市は自己診断などができるチェックシートを作製し、希望者に配布している。チェック項目に当てはまる場合、医療機関に相談するよう促す。

 厚生労働省によると、2010年時点での認知症高齢者(日常生活自立度2以上)数は全国で280万人と65歳以上の9.5%に達する。今後も増加が見込まれ、25年には470万人、12.8%になると推計している。徘徊により行方不明になったり事故などで死亡したりする高齢者が増えており、認知症対策が喫緊の課題となっている。

 滋賀県長浜市では警察が中心となって、独自の通報制度を6月に構築した。市内のコンビニ44店やタクシー事業者6社のほか、新聞販売店や警備会社なども参加。主に深夜や早朝に徘徊する高齢者を見つけた場合に警察へ連絡するほか、警察からの不明者情報を受けて捜索などに協力する。

 堺市は9月から、不明者の発見に役立てる「さかい見守りメール」を始める。徘徊の恐れがある高齢者らの特徴などの情報を事前に登録。不明になった場合に協力機関にメールで情報を流す。

 徘徊者の身元がすぐに判明するよう工夫をするのは兵庫県たつの市だ。NPO法人日本ハートフルサポート(同県加古川市)が考案した、登録番号や自治体名などを記載したステッカーを、徘徊者が履く靴のかかとに貼る。3桁の番号を照会することで身元がわかるようにした。